士幌農協は道内の農協で唯一、獣医師・授精師が農協の職員として働いており、現在は獣医師16名(女性6名)人工授精師2名(女性1名)が町内で飼養されている約76,000頭の牛の診療や人工授精を行っています。
主な業務内容として、酪農家、和牛繁殖農家、肥育農家においての診療業務や授精、受精卵移植業務、繁殖検診業務があります。
施設について
家畜診療課のある畜産センター内には集乳所・乳牛検定組合・酪農ヘルパー組合等の関係団体が集約されており、経営情報にアクセスがしやすく、転勤・転属が無いので長期間に渡り組合員農家の経営改善に取り組むことが出来ます。
また、家畜診療課に3頭同時にオペが実施できる手術室(電動手術台、枠場×2)が併設されており、運ばれてきた牛の手術を行います。
部屋は吹き抜けとなっており、2階の通路から実際の手術の様子が見える造りになっています。


アクセス・連絡先
住所 | 〒080-1219 北海道河東郡士幌町字士幌西2線159番地 |
---|---|
電話番号 | 01564-5-3363 |
畜産センター
(1)家畜診療課
士幌の特徴は、獣医師・授精師スタッフが農協の職員として働いていることで、現在は獣医師16名、授精師2名が、毎日、組合員が大切に飼養する牛を診療・人工授精しています。
(2)集乳所
集乳所では、より良質な生乳生産に向けて農協自ら生乳検査を行い、迅速な検査結果連絡と乳質や飼養管理の改善指導、搾乳機器の点検等を行っています。また、酪農家が使用するバルククーラー(乳業工場へ向かう集乳車が来るまでの間、牧場で搾乳した生乳を保冷するためのタンク)は農協が所有し、規模拡大に伴う施設投資を軽減させるため無償リース方式となっています。
(3)乳牛検定組合・酪農ヘルパー組合
また、士幌町の酪農家は、全国で初めてAT検定法を採用した「乳牛検定組合」に全戸加入しており、毎月、全頭検定を実施し、検定データは集乳所、診療、授精などのデータとリンクし、独自の「損防事業」として組合員巡回指導に役立てており、全国でも例を見ない畜産指導事業を展開しています。
この畜産農家を色々な角度からサポートする上記組織が一体となって畜産センター内のワンフロアで業務を進めています。
診療業務について
食欲不振、起立不能、子牛、分娩関連、蹄病など様々な不調の診療を行います。
牛の飼養には常に病気や死亡による経済的損失のリスクがあるため注意深く業務を行っています。


授精・繁殖業務
空胎日数短縮のためプログラム授精を初回授精時から積極的に活用しております。
また、士幌農協の繁殖検診の大きな特徴として、全国で唯一、乳牛検定組合に酪農家全戸が加入し、乳検データに基づいて経産牛の分娩、授精記録を整理して毎月最低1回の繁殖検診を実施している点があります。酪農家のリストアップの負担を無くし、経営安定化に継続して貢献していると自負しております。
さらに、繁殖検診と関連して、乳検データ、検診結果から牛群の状態を考察し、酪農家に対して飼料設計を含めた飼養管理指導を行っております。

近年の課題
一戸当たりの搾乳牛頭数は町内平均160頭(令和5年度)と多頭化が進み、特に周産期疾病と乳房炎の増加が問題となっております。周産期疾病の中でも第四胃変位はほとんどが手術適用となり、毎年、年間600頭以上の整復手術を実施しています。乳房炎についても、近年、乳量の増加に伴いエンドトキシンショックを発症する大腸菌性の乳房炎の増加が問題となっています。その他、肺炎、腸炎等の哺乳牛の疾病が特に冬季に増加し、治療にとどまらず、事故低減に向けた対策が急務となっています。
獣医師・授精師の仕事について
我々の仕事は授精、難産、手術等対象が大動物であり、体力を必要とする場面も多々ありますが、若手を中心にベテランと協力しながら切磋琢磨し、日々の業務に励んでいます。
また、業務内容や私たちの仕事でも触れているように、検診や診療の際に農家様と問題意識を共有し、一緒に解決し、経営向上に貢献する事は農協という地域密着の組織に所属しているからこそ行っていける事ではないかと考えています。


